2007年4月25日 星期三

一生ロマンと美を追いつづける画家許武勇



 一生ロマンと美を追いつづける画家許武勇            
曹 永洋 原作                               呉 昭新日語訳

許武勇(1920~)は当代に於ける画家のなかで伝奇的人物とも言うべき人物である。この医者と画家の二役を演じる怪傑はかって塩月桃甫に師事したが、其の画風は師匠とはまったく違っている。優れた天資に恵まれた彼は学業に於いても他人より抜きん出ていて、挫折することもなかった。東京帝大医学士とカリフオルニヤ大学公共衛生修士の二つの輝かしい学位を持つ彼は、優れた内科開業医の他に最も人をして感嘆させたのは彼がまた想像力と創造力に満ちた傑出した画家であることである。過ぎたる五十余年このかた一日たりと芸術の創作を忘れることはなかった。かれの作品には、彼の異なる各人生階段におけるそれぞれ違う感受が表現されている。一筆一筆の中にはっきりと彼の郷土の土、情緒、人間にぴったりとひっついた脈動をはっきりと聞き取ることができる。
アトリエは診察室の二階にあり、絵を描くとき彼は筆を使わず,もっぱら画刀を使った。両手に手袋をはめ、患者が来ると直ぐに手袋を脱いで医者の役割に変わる。
台湾台南の商家のうちに生まれ、天性敏感そして早熟の彼は、早くして人間の雑乱、苦しみ、憂愁を見透していた。彼は其の画作の中で人生の美と永恒を謳歌し、堅く只美だけが世俗の苦難から超脱できるものと信じていた。彼はじっと現実の人生を見つめて、ロマンと美を歌い、しかし象牙の塔の中に隠れて白日夢を見るような事はしなかった。
この一枚の油絵《回想》をみるに、右側にうつむいて沈思する少女。田舎から都市生活に変わった後も、彼女の脳裡に朝な夕な浮ぶのはやはり昔日のあの何のこだわりもない、自由に振舞える田園生活であり、絵の中の古い農家もまるで今にも舞い上がるようである。色鮮やかな妍艶なる花の姿も人をして濃厚なる回想と郷愁を引き起こしめ、画面はまるで温情平和に満ちた一首の田園のうたそのものであり、また人をして人間世界の無残と苦悶を忘れさせる。
(2002年8月12日;台北、天玉斎にて)
(2007年4月23日;日語訳完訳、カリフオルニャにて)

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